秋冬になるとインフルエンザの流行が気になりますね。
2025-2026シーズンに何度か聞かれたのが、抗インフルエンザ薬の「予防投与」の話です。
多くが「こどもがインフルエンザに感染したので、親はタミフルの予防投与をしたい」ということでした。
今回は、その予防投与について考えてみたいと思います。
<目次>
1) 抗インフルエンザ薬の予防投与
2) インフルエンザの感染について
3) 費用
4) 結論
1) 抗インフルエンザ薬の予防投与

幾つかある抗インフルエンザ薬の中でも、予防投与としての使用が認められているのは、以下のものです。
タミフル: 1日1回、7〜10日間(成人、小児は10日間)服用する内服薬
リレンザ: 1日1回(10mg)、10日間使用する吸入薬
イナビル: 成人及び10歳以上小児、40mg単回投与、若しくは20mg2日間投与1回吸入するだけで完了する吸入薬
吸入して10日間予防効果があるとされている
ゾフルーザ: 20mg錠と顆粒のみ予防適応あり。10mg錠は予防適応なし
予防投与の効果は、内服・吸入している期間だけ(イナビルは1回ないし2回吸入するだけですが、予防効果としては10日間とされてます)です。
抗インフルエンザ薬の添付文書に明記されている「予防投与」の対象者は、下記のとおりです。
原則として、インフルエンザ・ウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。
- 高齢者(65歳以上)
- 慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
- 代謝性疾患患者(糖尿病等)
- 腎機能障害患者
そのため、上記に該当しない人は、原則的には「予防投与」対象外となります。
予防投与に適したタイミングは、 「暴露してから48時間以内に開始することが望ましい(リレンザは36時間以内)」とされてます。
では、どれくらいの予防効果があるのでしょう?
A型又はB型インフルエンザ・ウイルス感染症患者の同居家族または共同生活者(10歳以上)を対象とした予防投与について、各々薬剤ごとに臨床試験が行われており、以下のようになります。

表を見る限り、予防投与しなくても、80%以上の人が感染しないということも意味します。
しかし、予防内服することで、発症確率を下げることはできるということも示してます。
2) インフルエンザの感染について

感染経路:飛沫・接触感染
潜伏期:感染から1〜3日で発症
感染力のある期間:発症の1〜2日前から、発症後5〜7日目頃までウイルスを排出
同居家族(こども)のインフルエンザ発症の場合において、上記について当てはめてみると下記になります。
- 診断がついた時点で、発熱(発症)から半日〜1日くらいは経過しています。(発熱直後だと、インフルエンザ・ウイルスがしっかり増殖してないことで偽陰性になりやすい)
- 発症する1〜2日前(状況によってはこどもが発熱する前)から、その子のインフルエンザが同居家族に対し、感染力を持っていることになります。
つまり、こどもが発熱する前から、感染力のあるインフルエンザ・ウイルスに暴露されていることになり、場合によっては、既に感染が成立し、潜伏期に入っている可能性もあります。
3)費用

予防投与は、保険診療の対象ではないので、診察代・処方薬など予防投与のためにかかる医療費は全額自己負担になります。
概算の費用は以下の通りです。
<予防投与>
初診料、調剤基本料、処方薬の支払いで、約6,000〜10,000円。
※R8年9月時点の概算であり、診療報酬の改定により金額は変更されます。
<予防接種>
当院では3,000円/回 (大人1回、13歳未満2回接種。)
※R8年9月時点の価格です。
予防接種の費用はかかりますが、予防投与と比較すると半分~1/3程度の負担となります。
こどもの接種をするついでに、同居家族も接種することで、家族間での2次感染を防ぎやすくなります。(必ずしも、子供から感染が始まる訳ではありません。むしろ保育園など集団生活をしていないこどもの場合、外部との接触が多い家族からこどもへの感染の確率の方が高いと思います。)
4) 結論

インフルエンザの感染対策の基本は、「予防接種」になります。
このことは、ゾフルーザの添付文書中にも下記のように明記されています。
「インフルエンザ・ウイルス感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤の予防使用はワクチンによる予防に置き換わるものではない。」
費用対効果の面からも、予防投与が優れている訳ではありません。
無事に予防できたとしても、10日間だけのために、予防接種以上の費用がかかってしまいます。
ですが、次のような状況で、予防接種をして感染した場合には予防投与を検討してよいかと思います。
- 受験直前に家族がインフルエンザに発症した
- 大切な行事(結婚式、仕事のプレゼンなど)を控えている等
こういった状況は家族からの2次感染によるデメリットが大きいため、予防投与を考慮する価値はあると思います。
改めて、インフルエンザ対策の基本は「ワクチン」になります。
流行期(警報レベル)になってから、検討するより、計画的に予防接種を行うことをお勧めします。
